あらすじ

〈主な登場人物〉

ロバート・テイラー(53) 
アメリカ大統領。軍を配置したことで多数の死傷者が出て、幼い娘に責められる。


コール・グリーン(32) 
元アメリカ連邦陸軍の大尉。自分の指導力不足で多数の死傷者が出て、自責の念に責められる。軍を去り、恋人とも別れた。


ルイス・エスコバル(67) 
コルドバで政治犯として捉えられている。高潔な人物。


ペネロペ・エスコバル(35) 
家族を顧みない父との確執で、何年も会っていない。少尉に父親との連絡役を頼まれる。イヤイヤながら引き受ける。父と会って話しているうちに、父の信念を知る。


ジョン・クラーク(42) 
IT企業CEO。使い切れないお金を持ち、引退を考えていたところに大統領に頼まれる。ヨーロッパで妻子を自爆テロで亡くしている。


ホセ・コルテス(56)
コルドバの独裁者。


ヘルナンデス(32) 
子どもをウォールの悲劇で亡くしている。


アントニオ(28) 
コルドバからの亡命者。家族が皆殺しにあっている。何としても、国を救いたい。コールと共に行動する。

「ザ・ウォール」高嶋哲夫
 
 アメリカ国境に、南米最貧国コルドバの難民「キャラバン」が迫っている。
 アメリカ大統領は軍の力で彼らを拒否しようする。兵士と難民が睨み合い、緊迫した空気の中、一発の銃声が響いた。それを合図に押し寄せる難民と兵士が衝突し、難民に数百名の死傷者が出る悲劇が起こる。それは、「ウォールの悲劇」と呼ばれ、世界に報じられた。これを機にアメリカは非難され、コルドバからの難民は途絶えた。
 
「血塗られた指揮官」マスコミは国境防衛の指揮官、コール大尉を非難する。コールは、責任を取って軍をやめた。
 一年後、コールは妻子とも別れ、故郷で養育費の送金に追われる日々を送っていた。コールのところに一通の郵便が届く。中には航空機のチケットと十万ドルの小切手が入っていた。仕事を引き受けてくれれば、さらに五十万ドルを出すという。
 
 ネバダの空港を降りると、リムジンが待っていた。
 コールは砂漠の中の廃墟ホテルに連れて行かれる。そこは、最新鋭の電子機器を備えた戦闘指揮所、ウォールームになっていた。リーダーは世界最大のテクノロジー企業、「テック」のCEOジョン。その他に経済、政治、心理学、通信などの専門家、傭兵の訓練会社の社長などが集められていた。大統領の密命のもと、コルドバを再生する計画が進められていたのだ。コルドバの国民から、我々の国を救ってほしいと言う強い要求があったのだ。
 ジョンはコールに、現場作戦の指揮を依頼する。コルドバの抵抗組織を訓練し、独裁者ホセと麻薬組織を倒し、強制収容所にいる指導者ルイスを救出する。コールはその申し出を断る。
 しかし、家族を殺され、コルドバから逃れてきたアントニオの悲痛な言葉に参加を決意する。
「私も祖国を愛している。子供のために、逃げ出す必要のない安全で豊かな国を作りたい」
 そのころ、FBIでは新入り捜査官のテッドが、ウォールの悲劇の映像を見ていた。その映像の中に不審点を見つける。最初の発砲は難民側から起きている。
 
 コールは傭兵部隊を連れてコルドバに潜入する。現地の抵抗組織と接触し、軍事訓練を始める。そこにはウォールで娘を失ったフェルナンデスもいた。彼はコールを恨んでいた。
「自分に従ってきた多くの者が死んだ。もう血を見るのはたくさんだ」
 厳しい牢獄生活で、指導者のルイスは希望をなくしていた。
 コールは混乱の首都に潜入し、娘のペネロペと会う。医師であり、大学教授の彼女は国民の間に人気があった。そのため、ホセはペネロペには手が出せなかった。彼女は、母が不遇に亡くなったのは父ルイスのせいだと考え、何年も父と断絶していた。
 彼女に再び指導者として戦うよう、ルイスの説得を頼む。
 
 砂漠の中のウォールームでも独自の戦いが行われていた。
 ジョンの指揮のもと、ホセや麻薬組織の莫大な裏金を秘密裏に移動させる工作を行っていた。革命後、国家の再建に使うのだ。
 FBIでは、テッドが最初に発砲したアメリカ兵を突き止める。その兵士はコルドバから多額の金銭を得ていた。ウォールの悲劇は仕組まれたものだったことが判明する。
 
 コルドバでは、コールの偽情報により、政府軍と麻薬組織が衝突する。麻薬組織は壊滅し、政府軍も大きなダメージを受ける。
 コールはペネロペと共に収容所に潜入し、ルイスの救出に成功する。しかし、コールたちはジャングルを帰還中、ウォールームの内通者により交信を絶たれ、部隊とも引き離されて孤立してしまう。部隊は壊滅し、敵に取り囲まれた時、近海を航行していた米軍空母から発信したヘリ部隊の援護により、脱出に成功する。ウォールームのジョンたちが米海軍の偽命令書をつくり、作戦を展開したのだ。
 ジャングルの基地に帰る途中、麻薬組織の生き残りの攻撃により、コールは死にかけるが、フェルナンデスに命を救われる。フェルナンデスの手引きで麻薬組織の隠した武器を手に入れる。
 
 ホセの公邸で、権力を誇示するパーティーが開かれる。コールたちは内通者を利用して公邸を襲い、一気に革命を成功させようとする。
 その戦闘の途中、ルイスが死亡する。革命軍の士気が落ちかけたとき、ペネロペが臨時政府を宣言した。「私が父の後をつぐ」
 コールはペネロペと再会を約束し、コルドバを去っていく。